岐阜県産の石gifukensan-no-ishi

岐阜県中津川市で採れる「蛭川みかげ石」

先日は石材の仕入れに行きました。久しぶりの丁場(石を切り出すところ)での石の検品をして、なんだか石屋さんになった気分でした(笑)。
お客様よりご注文を頂いた件で、石を探していてちょうどいい石材がありそうという情報がありましたので実際に検品に行きました。

これは実際に届いた石材です。形が真四角ではありませんが、今回のお客様のご要望が「さび石」だったので、このように石全体がさび色石を購入しました。

このさび石は岐阜県中津川市で採れる石材で「蛭川みかげ石」(恵那御影石とも呼ばれる)と呼ばれる石で、真っ白の石が多く取れる丁場がほとんどで、真っ白い部分や、白とさびが混じった部分、このようにさびだけの部分に用途に分けて使用することが多いです。

白い部分は大きな材料と多くの材料がが取れるので鳥居やお墓の材料・建築石材・石積み材などに利用されました。白とさびの混合した石材は、石積み材や建築石材などに使用されています。さび部分は建築石材や石積みなどの造園材に使用されます。

国内の石材同様にこの蛭川みかげ石も、丁場が全盛期に比べると減っており大きな丁場も少なくはなっています。ですので、このように全体がさび石という石を探すのも簡単ではありません。それはさび石自体に色のムラがあり、色の濃淡があるからです。それ自体は自然のものですから問題はありません。

ただし注文をいただいた内容につての石材は色合わせをしていきたいものですから、それが採れる大きさの材料を探す必要があります。

さび石は濡れるとこのように色が濃くなります。磨いた場合はこれに近い状態となります。石を磨いたらどんな色になるかは、水を掛けて濡らしてみるとそれに近い色が出ますので、磨いた時の予想を付けることが可能です。

蛭川みかげ石も石目に小目と中目があります。丁場によってはもう少し大きめの石面の所もあります。違いは、石の結晶の細かさとなります。石の結晶が細かいければ小目、大きければ中目、もっと大きければ荒目となります。これは、石の細かさを表現する用語で、全国ほぼ同じように使用します。

原石を知ると、石材についてより深く知ることができます。逆に石を知るには原石を知ることが、その後の石の使い方や加工の仕方にもつながるので楽しいです。

雪解けの山で見た原石

最近の暖かさや、先日の雨で正月からの積雪がかなり解けていました。まだ2月なので、これからも雪が降る日があるので気が抜けませんが、、温かい気候は気持ちも昂ります。

これは、今回の蛭川石のさび石を見に行った際に訪れた山での原石画像です。夕刻となっていたので、さび石(さび色)というしっかりした色が分かりづらいですが、なかなか見られない、きれいなさび石の原石です。

この石は小割りと言って、扱いやすいサイズまで大きな石を小さく成型したものです。こうすることで、加工するさいに必要でない部分を取り除き、運搬する時にも無駄な部分がないだけ、必要な石を最小限で運べるメリットがあります。

これは別の採石場です。ここは白御影石といって、先ほどのさび石とは異なり白い色の御影石が採れます。ここの大きな特徴は、3m近くにも及ぶ(もしかしたらそれ以上あったかもしれません)石が採れるということです。鳥居の材料にも使用されるということです。これだけの大きな材料が採れる丁場も今はなかなか見当たりません。

いくつも縦に細長くついている跡は、削岩機という細長い金属製の棒のようなもので穴を開け、そこに火薬を詰めて爆破させて石を割った跡だと思います。上の画像はその穴場の長さが短いですが、これはセリ矢という金属製の道具をハンマーで叩いて、石を割った跡だと思います。

石を割ったり、山から取り出すための工法は他にもいろいろあります。実際に山での作業風景は一見の価値ありです。石を取り出すにも、とても手間暇がかかっていることが分かります。そんなに手をかけて採ってくださった石材は、大事に扱いたいと思います。

石の表情が変わる瞬間 ― 切削から磨きまでの道のり ―

いよいよ原石の加工に入りました。まずは、中口径と言って約50cm程度の厚みの石を切ることができる機械で石を切っていきます。今回は板状の石を12枚程この石より加工して作ります。

石を切ると向かって右側のように白っぽい感じに仕上がります。これはすべての石材に当てはまるのですが、まれに切っただけで良いよ言われることがありますが、切っただけですとこのように白い感じとなり、これは黒御影石や赤御影石の場合も同様で、このように色がはっきりと出ることはありません。ですので、白御影石の場合を除き、切っただけ(切削仕上げ)の場合は、研磨と言って磨き工程を経ないと色を出すことは難しいです。

向って左側は本磨き仕上げをした状態です。本磨きとは、光沢のある仕上りであり、鏡面という表現をする場合もあります。表面は光沢があり、太陽に照らすとピカピカと反射します。磨き工程としては最高の仕上げであり、墓石などはこの仕上げで作られることがほとんどです。

この磨き工程も、本磨きの手前で止める水磨き仕上げというものもあります。最近はマット仕上げとも表現されるようですが、光沢の出る手前で工程を止めます。そうすると艶消しのような状態での仕上がりとなり、石の色は出るけど艶がない仕上げとなります。落ち着いた仕上げとなり、建築工事での和の建築などで、ピカピカした雰囲気でなく落ち着いた雰囲気を出した場合などにも使用されます。

このように磨き一つでも、仕上げ方法はいくつもありますので、用途に合わせた選択もしていただきたいと思います。

職人の技が光る。磨き工程と仕上げの美

さて磨き工程の風景です。このようにして水を使用しながら、いくつもの砥石を使用・交換しながら磨きをします。

水を使用するのは、石を切る場合と同じで研磨盤が石との圧力により磨くわけですが、その際に熱が発生して砥石と石が焼けてしまうのを防ぐためでもあります。ですので、冬の寒い時期でもこの水を使用する作業は避けられません。

この砥石は石材にもよりますが8個程度を順番に使用します。最初は荒目の砥石で石の平面を作り、それから順番に細かい目の砥石へと加工工程を進めます。

最終工程は「バフ」と言って、水を最小限に抑えて一気にこのように仕上げます。この「バフ」で仕上げないとこのような光沢は出ません。また、この「バフ」までの工程を丁寧に仕上げなければ、いくら「バフ」仕上げをしても砥石の跡が残っいていたり、光沢がぼやけたりしますので、一つひとつの工程において手を抜くことができません。この最終仕上げの時にその職人さんの手腕が表れます。

こちらの画像が原石の状態です。
この原石の状態で使用する際は「割肌仕上げ」と言って、自然の状態を表現したい場合に使用されます。

原石の状態

こちらの画像は本磨き仕上げです。
同じ石でもこのように表情が変わります。これが石の魅力です。

本磨き仕上げ

料理と同じく、同じものでも加工の仕方や使用する場所での選択により、さまざまな表情を見せてくれます。
これ以外にもまだまだ仕上げ方法はあります。こんな石の魅力を多くの人に知ってほしいと思います。